インド市場調査で気を付けるべきポイント
- Jet Research Team

- 2024年6月5日
- 読了時間: 6分
更新日:2024年6月6日
インドは人口が多く、経済成長も著しい魅力的な市場です。しかし、消費者のニーズは地域や階層によって大きく異なる複雑な側面があります。本記事では、インド市場調査を実施する上で気を付けるべきポイントをお伝えします。

【なぜインド市場は重要なのか】
インドの人口は約14億人と世界最大の人口大国であり、若年層が多いのが特徴です。一人当たりGDPは低いものの、中間所得者層の増加により購買力は着実に上がっています。経済成長率は7%前後と非常に高水準が続いており、今後も高度経済成長が見込まれています。
このように、インドには莫大な潜在需要があり、グローバル企業が成長を求めて参入を図る魅力的な市場となっています。一方で、多様性に富む複雑な市場でもあり、きめ細かな市場調査が不可欠です。
【地域差への対応が重要】
インドには29の州と7つの連邦直轄地域があり、宗教や言語、気候や文化などに大きな違いがあります。例えば、北部は主にヒンドゥー教徒、西部はイスラム教が中心です。公用語はヒンディー語と英語ですが、実に22の公用語が存在します。
このように、地域によって嗜好の違いが大きいため、全国規模で画一的なマーケティングを行うと的を射ずれてしまう可能性が高くなります。したがって、地域特性を踏まえた市場調査が重要になります。
【消費者の階層分析】
インドには、富裕層、中流層、低所得者層と所得格差が大きいのが特徴です。例えば、人口の約3%が富裕層で、消費性向が非常に高い反面、約25%が所得1ドル以下の低所得層です。
富裕層はグローバルブランドを好むなど先進国に近い傾向がありますが、中流層以下は地場ブランドを選ぶ場合も多く、価格重視の傾向があります。
このように、所得水準によって消費者のニーズや行動パターンが大きく異なるため、より綿密な消費者動向を把握する場合は、層別の市場調査が欠かせません。
【伝統と近代化の狭間】
インドは世界で最も伝統的な社会の一つですが、経済発展に伴う近代化も進んでいます。特に都市部では、新しい価値観や欲求が生まれつつあり、伝統とモダンの狭間で消費者が揺れ動いています。
例えば、食品業界ではベジタリアン志向が根強い反面、ファストフードの人気も高まっています。服飾分野でも、サリーなど伝統的な衣装を好む層と洋服を着用する層が混在しています。
したがって、伝統と近代化の狭間で変化する消費者ニーズを的確に捉えるため、質的調査による深掘りが重要になります。
【宗教や習慣への配慮】
インドはヒンドゥー教が主流ですが、イスラム教、シーク教、キリスト教など多様な宗教が共存しています。宗教的な理由から、一部の食材を避ける層や、特定の色や形を嫌う層が存在します。また、結婚や出産などのイベントに伴う習慣的な消費があり、節目のイベントごとに需要が変動します。
このように、宗教的・文化的な側面を無視すると、製品や販促活動が消費者の心象と合わずに失敗に終わる可能性があります。したがって、事前の市場調査でこうした点を把握しておく必要があります。
【SNSの影響力の高まり】
近年、インドではSNSの普及が著しく、FacebookやWhatsAppなどを活用する消費者が増えています。都市部の若年層を中心に、SNSの影響を強く受ける傾向にあり、ネット上の評判が購買行動に大きく影響するケースも少なくありません。
一方で、ネットアクセスが限定的な農村部もあり、SNSの影響力には地域差があることを認識しておく必要があります。SNSの実態を把握するには、インターネット調査に加えて、リアルな生活者視点を探る質的調査も欠かせません。
【ローカライズとグローバリゼーションの狭間】
グローバル企業が志向するグローバルスタンダードと、インド現地のローカルな商習慣の間には、軋轢が生じがちです。一方的なグローバル戦略では、現地ニーズとのミスマッチが生じ、受け入れられない可能性があります。しかし、過度にローカライズしすぎると海外ブランドの持つグローバル的な価値が損なわれてしまいます。
したがって、グローバルスタンダードとローカルニーズを適切に組み合わせるハイブリッド戦略が有効であり、どの程度グローバル視点かローカル視点かを検討する必要があります。
【複合的なアプローチが肝心】
以上のように、インドの市場は多様性に富んだ複雑な構造になっています。画一的な調査では実態を捉え切れず、複合的な市場調査アプローチが肝心です。
具体的には、統計データによる定量分析と、消費者の生の声を直接探る質的調査とを組み合わせる必要があります。あわせて、SNSや口コミを分析する nethnoraphyなどの新しい手法の活用も視野に入れましょう。
ターゲット層に合わせて、調査地域、対象者属性、調査手法を使い分け、様々な角度から掘り下げることが重要です。
【インド市場調査の実施体制のポイント】
調査会社に外部委託する場合は、守秘義務への高い信頼と、インドの事情に精通していることが前提条件となります。
自社で現地調査チームを構築する場合、現地スタッフのマネジメントが課題になります。言語や文化の違いを理解し、コミュニケーションギャップを埋める工夫が必要となります。
加えて、大規模な調査では、外注業者を適切に管理・指揮する調整能力が求められ、現地の会社とのやり取りに慣れていないケースは苦労するかもしれません。調査を統括できる人材の確保や、トレーニング体制の構築、信頼できるアドバイザーの確保も重要なポイントになります。
【付随的な課題への対応】
市場調査においては、調査そのものに加えて、付随する様々な課題にも対応が求められます。
例えば、交通事情が良くないことで、移動に時間がかかり、スケジュールの遅延が生じがちです。また、地方に行くほど、イベント等での交渉が必要になってくる場合があります。
こうした課題を想定し、適切な対応を検討しておく必要があります。現地パートナーとの連携が重要になってくるでしょう。
インドへの長期・短期の出張が必要になることも覚悟しておく必要があります。現地での生活環境の確保や、セキュリティ対策なども考慮すべきポイントです。
【まとめ】
本記事では、インドの複雑な市場構造を踏まえ、効果的な市場調査の実施ポイントをお伝えしました。
地域、階層、世代などによる嗜好の違いに注目
伝統と近代化の狭間にある変化を捉える
宗教や習慣への配慮が不可欠
SNS等の新しい消費トレンドにも着目
グローバル視点とローカル視点の調和が肝心
定量と定性の複合的な調査アプローチが有効
適切な体制と外部パートナーの活用が重要
インドは魅力的な市場ですが、入り口が難しい面もあります。本記事を参考に、丁寧な事前調査を行い、現地の実態に即した戦略立案を行っていただければと思います。
インドについての市場調査をご検討の場合は、お気軽に弊社にお問い合わせください。




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