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インドのeスポーツ市場が熱い理由

  • 執筆者の写真: Jet Research Team
    Jet Research Team
  • 2024年6月6日
  • 読了時間: 7分

更新日:2024年6月10日

はじめに


近年、インドでeスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)の人気が急速に高まっています。若年層を中心に、プロゲーマーへの憧れが広がり、eスポーツ大会の視聴者数が急増しています。一方で、まだ認知度としては、まだまだ成長余地が残されている新興市場でもあります。


本記事では、インドにおけるeスポーツ市場の現状と将来性、マーケティング機会について解説します。


SkyeSports Championship
The Skyesports Championship 5.0 BGMI LAN Finale has concluded as a tremendous success, attracting over 12,000 enthusiastic fans to the Koramangala Indoor Stadium in Bangalore


【世界最大規模のeスポーツ人口】


2022年のデータによると、世界のeスポーツ人口は約5億人と推定されていますが、その内インドが約1.5億人と世界最大のプレイヤー人口を擁しています。さらにIntel、AMDなどのPCメーカーが低価格PCを投入したことで、より裾野が広がりつつあります。


また、スマホゲーム人口においても、Battlegrounds Mobile IndiaやCall of Duty: Mobile, Real Cricket といったeスポーツタイトルの人気が高まっています。ローエンドのスマホでも快適にプレイできるため、若年層や低所得者層にも広く浸透しています。


こうした潜在層の厚さが、インドにおけるeスポーツブームを後押ししていると言えるでしょう。


【若年層の熱狂が支える市場成長】


世界人口の約28%を占めるインドの若者は、eスポーツに夢中になっています。10代、20代の若者を中心に、eスポーツプレイヤーやプロゲーマーを目指す層が急増しています。


eSports Insider社の調査によると、インドのeスポーツファン層の65%が18-25歳と若年層が中心です。彼らは熱狂的に大会の観戦を楽しみ、SNS上で大会の話題で盛り上がっています。プロゲーマーへの憧憬も高く、ライブ配信者フォロワー数は1,000万人を超える人気者も存在します。


このように、eスポーツはインドの若者の文化的なムーブメントとさえなりつつあり、その熱狂が市場の牽引力となっています。


【5G普及で一気に拡大する可能性】


現在のインドのeスポーツ市場は、まだ世界シェアの2%程度と小規模です。しかし、5G通信網の整備が進めば、一気に成長軌道に乗る可能性があります。


現状の4Gネットワークは、ラグや体感速度の遅さから、完全にeスポーツに適したネットワーク環境とは言えません。しかし5Gの超低遅延、高速、大容量の特性が活かされれば、よりリアルでスピーディーなeスポーツ体験ができるようになります。


すでにIntel、Qualcommといった通信機器メーカーは5G時代に備えた製品投入を進めており、2025年までに5Gが普及すると見られています。その際、スマホやクラウドゲーミングの分野が急成長する可能性が高く、eスポーツ市場の緩やかな成長から急加速に転じることが予想されます。


【世界最大の視聴者マーケットへ】


現在のインドのeスポーツ視聴者数は約1億7000万人と推定されていますが、今後さらに伸びが期待できると見られています。


2020年時点で世界最大のeスポーツ視聴者マーケットは中国の2億9000万人でしたが、2023年頃には、インドが中国を抜いて世界一のeスポーツ視聴者マーケットになると予測されています。


視聴者は18-25歳の若年層に集中しており、彼らはスマホやPCなどマルチデバイスで、YouTube、Twitchなどの動画サービスを通じて大会の生視聴を楽しんでいます。大手動画配信サイトFanCodeは、eスポーツ大会の独占放映権を獲得するなど、eスポーツに特化した動画配信プラットフォーマーが次々と参入しています。


企業はこの膨大な視聴者層をマーケティングの対象としてとらえ、スポンサー広告などによる動画視聴者への訴求が有効と言えるでしょう。


【国を挙げての育成支援・制度化】


インド政府は、eスポーツの発展を経済成長の切り札と位置づけ、様々な支援策を講じています。


2022年には、eスポーツを公的なスポーツカテゴリーとして正式に認めるなど、制度化を進めています。これにより、eスポーツ選手への公的助成や優遇措置の適用が可能になりました。


また、IT省や青年・スポーツ省が中心となり、eスポーツ振興のための委員会を設置するなど、政府主導でのeスポーツ推進体制が整備されつつあります。さらに、大学でのeスポーツコース新設や、地方政府によるeスポーツパーク設立など、人材育成の環境作りも活発化しています。


こうした国を挙げての支援が、世界に伍するインドのeスポーツ・エコシステム形成を後押ししていくと考えられます。


【プロリーグの存在感と企業参入の機運】


投資家や企業の間でも、eスポーツへの注目度が急速に高まっています。その一因が、プロリーグの存在感の高まりにあります。


有力なeスポーツタイトルを運営する各社が、地域性の高いリーグ戦を主催するようになり、優勝賞金も高額化する傾向にあります。例えばBattlegrounds Mobile Indiaは、1,600万ルピー(約2,200万円)の優勝賞金をかけた大会を開催するなど、賞金総額は年々拡大しています。


このようなプロリーグの発展に伴い、スポンサー企業による大会協賛や、ゲームパブリッシャー企業による主催大会開設など、多くの企業がeスポーツビジネスに参入してきました。さらに、大手メディア企業がeスポーツ専門チャンネルを開設するなど、メディア展開も活発化しています。


こうした企業の参入機運が、エコシステム形成とさらなる大会や視聴者層の拡大を加速させていくでしょう。


【物販・eコマースでも機会】


eスポーツ関連の視聴者数やファンベースの増加に伴い、物販およびeコマース分野でもビジネスチャンスが広がりつつあります。


プロゲームチームのオフィシャルグッズやeスポーツ大会のコラボ商品など、関連グッズの需要が高まっています。また、特殊なゲーミンググッズ(キーボード、マウス、ヘッドフォンなど)の人気も上昇しており、eコマース販売が拡大基調にあります。


さらに、ゲーミングPCの低価格化などを背景に、PCゲーミング市場が活況を呈していることから、ゲーミングPCおよび周辺機器の販売チャネルとしても、eスポーツ視聴者層が有望視されています。


このように、eスポーツをマーケティングに活用する機会は、物販・eコマース分野にも及びつつあり、今後さらに広がっていくと考えられます。

【草の根eSportsイベントの台頭】


このようなインドのeSports市場の盛り上がりを背景に、地方都市を拠点に大きく成長する企業も現れてきました。


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その一例が、SkyeSportsと呼ばれる企業です。SkyeSportsは2019年にインド・ノイダで設立された、eSportsイベントの企画運営会社です。設立者は元プロゲーマーで、現地のゲーミングコミュニティに精通したインドの若手起業家たちです。


SkyeSportsの最大の特徴は、インドのローカル色を前面に押し出した斬新なイベントを数多く企画・開催していることです。例えば、"Road to Glory"と題した国内大会では、優勝者に伝統的なEsportsゲーミングの本場・アメリカに挑戦する権利を与えるなど、国内外のゲーミングコミュニティーとつながるイベントを実施しています。


また、Skyesportsが企画する大会では、出場選手に対して伝統的なインドのチャドル(おおい)を与えたり、審査員にインドを代表するeスポーツ有名人をむかえたりと、常にローカル色を取り入れた演出を心がけています。


こうした地元に根差したイベント作りが人気を呼び、SkyeSportsは設立から僅か3年で、国内最大の民間eSportsイベンター企業に成長しました。


SkyeSportsの手法は、まさにローカライズ戦略の賜物と言えるでしょう。今後さらに進化を遂げ、独自のeSportsIPの創出にも取り組んでいく計画です。インド発のeSportsコンテンツが、グローバル市場に打って出る日も近いかもしれません。


【まとめ】

インドのeSports市場は、世界最大の潜在市場として、ここ数年で大きく成長を遂げてきました。今後5Gの普及などで更なる拡大が見込まれ、企業の参入機運も高まっています。


一方で新興市場ゆえの人材不足など課題もありますが、市場成長による業界としての注目の高まり、政府のサポート、地元の実情に精通したローカル企業の台頭などにより、状況は変わりつつあります。


SkyeSportsのような斬新なイベント企画は、ローカライズ戦略の成功事例と言えるでしょう。


このようにインド市場は常に変化し続けており、マーケターには最新の実態把握と、的確な戦略立案が求められます。ローカル視点を無視せず、グローバルとのベストミックスを追求することが成功への鍵となります。



 
 
 

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